徳川時代の数学

東アジアでは中国の数学が足踏みしていた。商業の発達で計算は必須となり、突然江戸数学がブームとなった。

1627発行の指南書「塵劫記」は空前のベストセラー、ロングセラー となった。著者の吉田光由は京の豪商角倉の一族

関孝和(1642?-1708)

藤岡の生まれだが、幼児の頃に江戸に移った。甲府宰相家・江戸勤番100石取りの家柄で 関家の養子に迎えたのは数学とは縁の無い兄の子であったが、孝和の没後、 不功績により、お家取潰しとなっている。

関・ベルヌイ数

ヤコブ・ベルヌイと関孝和が離れた地でほぼ同時期に完成させた。徳川時代は宣教師がいなかったので 中国と異なりヨーロッパとの文献の往来がなかった。 \[ \sum_{k=1}^{k}k= 1+2+3+4+5+6+7+8+9+10 =\dfrac{n(n+1)}{2} \] \[ \sum{k=1}^{n}k^{2}= 1^{2}+2^{2}+3^{2}+4^{2}+5^{2}+6^{2}+7^{2}+8^{2}+9^{2}+10^{2} =\dfrac{n(n+1)(2n+1)}{6} \] \[ \sum{k=1}^{n}k^{3}= 1^{3}+2^{3}+3^{3}+4^{3}+5^{3}+6^{2}+7^{3}+8^{3}+9^{3}+10^{3} =\left\{ \dfrac{n(n+1)}{2}\right\}^{2} \]
   ,.(+/a) ,~a=.  > ,.^&(>:i.5) L:0   {@> >: i.10
   
 1   1    1     1      1
 2   4    8    16     32
 3   9   27    81    243
 4  16   64   256   1024
 5  25  125   625   3125
 6  36  216  1296   7776
 7  49  343  2401  16807
 8  64  512  4096  32768
 9  81  729  6561  59049
10 100 1000 10000 100000
55 385 3025 25333 220825
関もベルヌイも10乗まで計算している 一般項は \[ f(x)={\frac {x}{e^{x}-1}}=\sum _{n=0}^{\infty }{\dfrac {B_{n}}{n!}}x^{n}\]  漸化式に展開すると次のアルゴリズムが得られる。

\(B_{0}=1\)

\( B_{n}=−\dfrac{1}{n+1}\sum_{ k=0}^{n−1}\) \(_{n+1}C_{k}B_{k} , (n\ge 1)\)

(手計算)

\( B_{0}=1 \)

\(B_{1}=-\dfrac{1}{2}\)\(_{2}C_{0}B_{0}=-\dfrac{1}{2} \cdot 1 \cdot 1 =-\dfrac{1}{2}\)

\(B_{2}=-\dfrac{1}{3}\)\(_{3}C_{0}B_{0}+_{3}C_{1}B_{1} =-\dfrac{1}{3}( 1 \cdot 1-3 \cdot \dfrac{1}{2}) =\dfrac{1}{6} \)

\(B_{3}=-\dfrac{1}{4}\)\(_{4}C_{0}B_{0}+_{4}C_{1}B_{1}+_{4}C_{2}B_{2} =-\dfrac{1}{4}( 1 \cdot 1-4 \cdot \dfrac{1}{2}+6\cdot \dfrac{1}{6}) =0 \)

1以外の奇数のベルヌイ数は0になる

関は0を除いた10個の関・ベルヌイ数を記述している

   SB_numbers 8x
1 _1r2 1r6 0 _1r30 0 1r42 0 _1r30
SB_numbers=: 3 : 0
NB. usage: SB_numbers 8x // using nx
ANS=. B0=. 1
for_ctr. i. y do.
 Nx =. 2 + ctr 
   if. 0= ctr do. Cx=. ctr ! Nx  
   else. Cx=: ( i. >: ctr ) ! Nx end.
 Bx=.(- % Nx)* +/    Cx * ANS
 ANS=. ANS, Bx
end.
)

行列式

行列式の値を求める方法はほぼ同じ頃独立に関とライプニッツが考案したこと を書いてある教科書は少ない。まだベクトルやマトリクスが無かった時代にである。 和算の行列式は連立方程式の解法や変数の減数として考察されている。

関は途中で怪しくなっているが 建部賢弘が修正しているし、ライプニッツだって間違えている。

まだ、線形数学が未発達だったので、先駆けとはなったがこの時代には大樹には育たなかった。

-/ . * 
は行列式の値を求める
   3 3 $  10  ?. 10
6 9 1
4 0 2
3 8 7
 -/ . *  3 3 $  10  ?. 10
_262

建部賢弘と松永良弼

建部賢弘(1664-1739)

建部は関孝和と20歳離れた弟子で関の数学を分かるように解説し、発展させた。 \( \pi \)を求めるグレゴリー級数は1670年頃に発表されている。 江戸初期の和算家が\( \pi \) の値に挑戦している。天文学が必要としており、関は 131071角形とエイトケン加速を用いて11桁まで正確に求めている。 建部の級数

無限級数展開で41桁まで正着。 オイラーに15年先行している $$ \dfrac{\pi^{2}}{9}=1+\dfrac{1^{2}}{3 \cdot 4} +\dfrac{1^{2} \cdot 2^{2}}{3 \cdot 4 \cdot 5 \cdot 6} +\dfrac{1^{2} \cdot 2^{2} \cdot 3^{2}}{3 \cdot 4 \cdot 5 \cdot 6 \cdot 7 \cdot 8} + \cdots $$

松永良弼(1692-1747)

関流。 小数第49位まで正着 $$ \dfrac{\pi}{3}=1+\dfrac{1^{2}}{4 \cdot 6} +\dfrac{1^{2} \cdot 3^{2}}{4 \cdot 6 \cdot 8 \cdot 10} +\dfrac{1^{2} \cdot 3^{2} \cdot 5^{2}}{4 \cdot 6 \cdot 8 \cdot 10 \cdot 12 \cdot 14} + \cdots $$
  25j10 ":  1r3p1
             1.0471975512
 
  1x,1r24,(4% */ 4 6 8 10), 225% */ 4 6 8 10 12 14 
1 0.0416667 0.00208333 0.000697545
   25j20 ": +/  1,1r24,(4% */ 4 6 8 10), 225% */ 4 6 8 10 12 14 
   1.04444754464285720000